第十二話「パッカードの最期」
「おい、扉を開けろ!僕はパッカード社長の息子だぞ!」
「申し訳ございませんが、それはできません。恐れながら貴方様は感染しておられます。いかなる理由にせよ、保菌者をインナー・ディレクトリに入れることはできません」
「もう一度言うぞ。ブラストドアを開けろ!
ケルビン、このクソタレットを破壊しろ!」
その時、スピーカーから声が流れ始めた。パッカードの父親のものだった。
「マイケル、お前はもう家には戻れない。強化遺伝子を持った人間が感染したということは、もはやその真菌は、我々に対しても強力な耐性菌となっている。つまりお前が本社に戻れば、感染を止める前に、内部世界が崩壊してしまう可能性が高いのだ」
「パパ!? なんでそんなこと言うんだよ・・・」
「すまん、マイケル。外の世界で生きろ。もう、それしかないんだ」
「なら、三等市民どもを皆殺しにしてやる。僕が死ぬなら、全員死ねよ!」
そのとき、タレットが一斉にマイケル・パッカードに向いた。
疑問を投げかける前に、タレットから放たれたビームが、彼の身体を貫いたのである。
なぜ、そうなったのか、誰も分からなかった。
父親の命令なのか、それとも人工知能体ウォーデンの独自の判断なのか、誰も知る由はなかった。だがマイケルの命はここまでだった。
「ケル・・・ビン・・・最後の命令だ・・・世界中の人間を・・・殺・・せ・・」